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ミハエルとマチルダの戦いは一進一退の攻防を続けていたが、高射砲に狙われるプレッシャーの前に、マチルダはその精神を大きく削られていた。 | ||
ミハエル:「チャンスっ」 | ||
今こそ好機とばかりに、ミハエルはマチルダ達を追い詰めていくが、マチルダの粘りはすさまじくミハエル達の弾薬や兵の消耗が激しい。 | ||
ミハエル:「くっそー、粘るなあいつら。そろそろ弾が尽きてくるぞ」 | ||
予想外のマチルダ達の力にミハエルもまた激しい消耗を強いられていた。 | ||
両陣営とも、残りわずかな物資での戦いであったが、先に精神的な壁に追い込まれたのはマチルダのイギリス軍であった。 | ||
マチルダ:「どうすればいいんですの? どうすれば、この危機を乗り越えられますの?」 | ||
様々な正攻法をシミュレートするが、どの方法も確実ではない。 | ||
このままではやられてしまうと、ついに重箱の隅をつつくかのごとく奇策という屈辱的方法をとらざるを得なくなる。 | ||
しかしマチルダは常に正道を歩んできたため、外道とも言える奇策を考えあぐねている。 | ||
ミハエル:「早く。弾の補給が早くこねぇと、さすがにやばいぞ」 | ||
しかし、そんなイギリス軍の状況をドイツ軍も達観できる余裕はなかった。 | ||
徐々に攻勢に転じているものの、その残りの弾薬は心許ない。 | ||
ミハエルは均衡を破ろうと、いちかばちかの88mm砲をマチルダに向かって発射する。 | ||
マチルダ:「きゃあっ!!」 | ||
空気を切り裂く轟音は、見事イギリス軍を直撃。 | ||
チャンスとばかりにミハエルたちはイギリス軍へと攻勢をしかけた。 | ||
ミハエル:「ひゃっほーい、形勢逆転だなぁ、おい」 | ||
マチルダ:「くぅっ!! このままやられはませんわ……」 | ||
けれど、これまでの激戦で、戦力となる戦車はあとわずか。マチルダを含め、兵士たちもだいぶ消耗している。 | ||
マチルダ:「弾の補給を!! 早く!!」 | ||
兵 士:「それが、もう装填しているので全部です!」 | ||
マチルダ:「なんですって……!? このままでは、負けてしまうわ、どうしたらいいのかしら……?」 | ||
マチルダが必死に頭を回転させる。また、ミハエルたちも、焦りの表情を見せていた。 | ||
ミハエル:「ちっ。しつこく粘ってくるな、あいつら。とっとと降参すればいいのに。こっちの戦力にも限界があるんだよ」 | ||
ミハエルが率いる軍、マチルダが率いる軍、一進一退の攻撃を続けている。そしてマチルダたちは、この陣地に対して、どう攻撃を仕掛けるか、攻めあぐねていた。 | ||
マチルダ:「どうすればいいんですの? このままでは、兵士たちが消耗しきってしまう。弾も残り少ない。何か、奇策を考えなければ……」 | ||
苛立たしげに舌打ちするマチルダ。そしてマチルダたちがまごついている間。ミハエルたちの別部隊が、マチルダたちが構築していた広大な陣地を激しく攻撃し、補給部隊を通そうとしていた。 | ||
マチルダ:「まさか!? あそこを抜けたですって――」 | ||
ミハエル:「よっしゃ、来た来たぁっ!! 早いとこ敵を制圧してくれよ、頼むぜ!!」 | ||
そして数日後、マチルダの敷いたボックス陣地はドイツ軍によって突破され、ドイツ軍は補給部隊を通すことに成功した。 | ||
ミハエル:「よっしゃぁ! こうなったらオレたちのもんだぜ!! 行っくぞぉおおっ!!」 | ||
補給を得たミハエルたちは、今の陣地から出て、進撃を開始する。 | ||
マチルダ:「ここは、一時撤退したほうがよさそうですわね。この勢いで突っ込まれたら、多くのの兵士が死にますわ」 | ||
補給も頼りなくなったマチルダたちは、潰走状態になり、仕方なく本拠地の方向に敗走していく。 | ||
イギリス軍はそのままトブルクまで敗走していくが、ミハエルの猛追がすぐそこまで迫っていた。 | ||
ミハエル:「おらおらおら!! 逃がしゃしねぇぞ!! 覚悟決めろや、お前ら!!」 | ||
勢いに乗ったミハエルたちは、マチルダたちの敗走拠点、トブルクに攻撃を開始し、翌日にはトブルクを陥落させた。 | ||
ミハエル:「このままじゃ終わらないぜ、イギリス軍!! まだまだオレの体力はありあまってるんだ。行くぞ!!」 | ||
まだまだ止まることのないミハエルはイギリス軍の不得手な機動戦に持ち込むことに成功し、イギリス軍を追い続けた。 | ||
引き続き敗走するマチルダたちの追撃を続行したが、その追撃も、エル・アラメインの防衛線で息切れてしまい、ようやくその攻撃を停止した。 | ||
ミハエル:「ちっ、ここも落としたかったのに……!」 | ||
ミハエルが歯噛みし、攻撃がやんだマチルダたちはほっと息をつく。 | ||
マチルダ:「……なんとか、エル・アラメインは死守できましたわね。屈辱の敗戦でしたけれど、次はわたくしたちの勝利ですわ。覚えていなさい、そこの女!!」 | ||
マチルダ:「わたくしの名はマチルダ! あなたの名は?」 | ||
ミハエル:「ミハエルだ!!」 | ||
マチルダはミハエルの名を、強く胸に刻んだ。 | ||
ミハエル:「次も楽しく戦おうぜ!!」 | ||
ミハエルがさわやかに笑って、その場を立ち去る。その後姿に、ライバル到来の予感をひしひしと感じた。のだが。 | ||
ミハエル:「なぁ、おい、マチルダ」 | ||
ミハエルは申し訳なさそうな顔で戻ってきた。 | ||
マチルダ:「なんですの?」 | ||
ミハエル:「ここ、どこだ?」 | ||
マチルダ:「……今、なんとおっしゃいましたの?」 | ||
ミハエル:「だから、ここはどこだって? 逃げるイギリス軍を追うのに夢中で、場所が分からなくなっちまった」 | ||
自分はこんな相手をライバルとして認めるところだったのか。マチルダは自らに対する怒りと、目の前の女の間抜けさに対する怒りがこみ上げてきた。 | ||
マチルダ:「ここはエジプトのエル・アラメインの手前です!! 敵に道を聞く馬鹿がどこにいますか!?」 | ||
ミハエル:「確かに敵だけど、今は戦ってないだろ?」 | ||
マチルダ:「…………っ!!」 | ||
ミハエル:「んじゃ、助かったよ。ありがとな」 | ||
今度こそ去っていくミハエル。マチルダは地を這うような声で呟いた。 | ||
マチルダ:「あんなのがわたくしのライバルだなんて……っ!!」 | ||
マチルダは頭を抱え、地団太を踏んだ。 | ||
―――この後、戦いはイギリス軍最後の防衛線、エル・アラメインの戦いへと移って行った。 | ||
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