魔法使い――古今東西多くの物語に登場し、近年の有名なところで言えば『指輪物語』のガンダルフ、『ハリー・ポッターシリーズ』のハリー・ポッターが挙げられます。
第3回は、中世より多くの物語に登場して、今も高名な魔法使いとして知られている魔法使いの中の魔法使いを紹介します。
古くより、魔法と呼ばれる不思議な力で自然などの力を操る存在として登場するのが魔法使いです。
彼らは一つの職業?でありながらもその役目は様々で、ある時は主人公を支援する経験豊かな知恵袋として、またある時は主人公の邪魔をする憎らしい敵役として、さらには第三者の判断で敵にも味方にもとれる存在として登場します。
魔法使いの描かれ方は物語によって実に様々ですが、ほとんど物語で重要な役割を果たし、物語を大きく動かす役目を担っています。
ケルト神話にも多くの魔法使いが登場し、アイルランドを巡る神々の一族の戦いに登場するダーナ族は、自然を操り、死者の魂を呼び戻し、人の感情を動かすことができました。
また、神々の時代の終わった後に登場した英雄『クー・フーリン』や『フィン・マックール』は魔法使いではありませんでしたが、彼らは魔法使いに師事してさらなる英雄としての力を得ることができました。
そして、ケルト神話に登場する魔法使いの中で、もっとも有名な魔法使いが、アーサー王を支援したマーリンです。
アーサー王は、ケルト神話の中でも有名で人気もあるブリテンの偉大な王様です。そんなアーサーの出生には、マーリンが関わっていました。
アーサーの父、ウーゼルがブリテンの王に就いた際に行われた会議で、ウーゼルはイグライネという女性に惹かれてしまいます。
しかし、イグライネは彼の部下である男の妻であり、その思いは許されるものではありませんでしたが、その思いを叶えるために登場するのがマーリンでした。
マーリンはウーゼルを連れて、イグライネがいる城に向かうと姿見を変える魔法を使い、ウーゼルをイグライネの夫の姿に変えました。
ウーゼルは堂々と城に入り、イグライネの下を訪れ熱い愛を交し合い、そこで誕生したのがアーサーです。
その後、ウーゼルはイグライネの夫に戦いを挑み、見事勝利を収めてイグライネと結婚しました。
ウーゼルとイグライネの間に生まれたアーサーでしたが、マーリンによって王にふさわしい教育を受けられる場所へということで、ウーゼルの家臣であるエクトール卿に託されます。この時、ウーゼルはアーサーがどこに連れて行かれたのか知らされず、エクトールも託された赤子が誰の子供であるか知らされることはありませんでした。
そしてそれから年月が経ち、ウーゼルは死んでしまいます。これによりブリテンの王は不在となってしまい、さらに年月が過ぎる中、我こそが新たな王だと名乗りを上げる有象無象の人間達が現れます。
この状況を見知ったマーリンは、カンタベリの大司教と一計を案じ、クリスマスの日に王になりたいと叫ぶ全ての人々を集め、彼らの前に大きな石に突き刺さった剣を用意しました。
「この岩に突き刺さった剣を抜いた者こそが、この国の正統な王である」と刻まれた石の台座から剣を抜こうと、多くの人々が挑戦しましたが、剣が抜ける気配はありません。
そこで、新年に国中から戦士を集めて大会を開き、優秀な成績を収めた者に挑戦をさせようという話になりました。
そして新年になり、国中から腕自慢の戦士が集まる中には、腕試しとして騎士になったばかりの息子の腕試しにと、エクトール卿とその息子カイ、そして付き人として同行したアーサーがいました。
そこで、カイは自分の剣を宿屋に忘れたことに気づいて、アーサーに剣を取ってくるように頼みます。剣を取りに向かったアーサーでしたが宿屋は閉まっており、どこかで剣を借りられないかと探していたところ、教会に立ち入り石の台座に突き刺さっていた剣をあっさりと抜くと、剣を待つ義兄の下へと戻ります。
カイはアーサーの持ってきた剣が、ブリテンの王である証明の剣であることを知ると、エクトール卿に自分が抜いたと報告しますが即座に嘘が見破られ、アーサーが抜いたことを知ります。
エクトール卿はこのことを直ちに、カンタベリー大司教に伝えると、多くの人々の前でもう一度剣を抜くようにアーサーに頼みます。
そして、人々が見守る中アーサーは再び台座に突き刺さった剣を抜きますが、こんな若造が王であるはずがないと、また剣を石に突き刺し自ら剣を抜こうとしますが、アーサー以外に剣を抜ける者はいません。
そうしている内に、周囲から「アーサーを新たなる王に」という声が広がり、ついにアーサーはブリテンの新たなる王として認められ、ここに伝説の英雄王が誕生したのです。
その後、アーサーは様々な困難に直面しつつもそれを乗り越え、ブリテンの王としての道を歩み数々の伝説を作っていきますが、その中でも彼を助けたのがマーリンです。彼の力添えなくしてこの偉大なる王の誕生はなかったことでしょう。
本作では、こうした偉大な王を生み出した魔法使いを模した『大魔術師』が登場します。
彼は物語開始時に英雄妖精の前に現れ、冒険の旅に役立つ装備を授けてくれます。その装備は主人公が完全に使いこなすことはできませんが、この武器を使いこなせる仲間と出会った時、どんな強敵にも負けない頼もしい仲間となってくれます。
そして英雄妖精の力を見定め、真の強さを手に入れた時、大魔術師は英雄妖精に大いなる祝福を授けてくれることでしょう。