開戦当初は連戦連勝の日本海軍だったが、いまだ米空母戦力は健在であり、大きな脅威であることには変わりはなかった。そこで聯合艦隊司令・山本五十六はミッドウェー島を占領し、米空母部隊を誘い出して一気に叩く作戦を発案したが、大本営はミッドウェー島の戦略的価値が低いことと、最終的にハワイ攻略まで行うことは危険すぎることを理由に反対していまいち渋っていた。
しかし、1942年4月に起こった空母から発艦した米爆撃機B-25「ミッチェル」による帝都爆撃と山本長官の進退をかけた発言により、大本営は敵の空母戦力を叩く決心をする。本来の目的は米空母部隊の誘い出しだったが、作戦は「ミッドウェー島攻略」とアリューシャン方面へ警備区域を拡大することも兼ねたものになっていった。
日本は作戦行動中ミッドウェー方面をAF、アリューション方面をALと読んでいた。米軍は無線傍受で暗号文の解析をしていたが、その暗号文に登場する「AF」と呼ばれる場所がどこかがつかめなかった。ある程度まで絞り込みAFがミッドウェーだろうという推測から米軍は場所を特定させるために、ワザと暗号文を使用せずに「ミッドウェー基地の海水を真水にする機械が故障して、飲料水が不足している」の一文をミッドェー島から発信。これを傍受した日本通信兵は「AFは水不足」と発信してしまった。これにより作戦の目的地が判明し、米軍は先手を打つ準備を開始する。
この時期の米軍は先の珊瑚海海戦(※)で空母「ヨークタウン」が中破したことにより、不利になっていたが不眠不休の復旧作業で修復を終え、戦線に加わった。日本軍はその情報を知らず、空母「赤城」を含む正規空母全4隻による攻撃部隊と上陸部隊、さらに「大和」を含めた後方支援部隊を編成し、アリューシャン方面とミッドウェー島の両方へ向かった。
目標海域に到着した日本軍はミッドウェー島に向け、攻撃の第一波を向かわせた。実はこの時、日本の攻撃隊は攻撃に向かう途中で捕捉されており、ミッドウェーから航空機の移動は済んでいた。島に到着した攻撃隊は少数の旧式戦闘機による迎撃を受けたが、被害は少なく施設や飛行場爆撃を行った。ここで本来の目的が米空母の殲滅だったことを知らずか、被害状況から日本攻撃隊が「第二波攻撃の必要がある」と送信。日本空母部隊は米空母に備えていた対艦魚雷装備から爆弾に換装を始めた。
この時、日本艦隊はミッドウェー島から離陸した攻撃隊による空襲を受けたが、問題なく零戦で迎撃したが低空におりたために上空が手薄になる。その後、機動艦隊旗艦空母「赤城」に敵艦隊と空母発見の一方があり、再び魚雷装備に変更することになった。慌しい準備の中、第一次攻撃隊が帰還してきており、空母艦内は煩雑に置かれた爆弾と魚雷、機体収容でさらに慌しくなる。そこに待ち伏せていた米空母から発艦した米航空機隊が、零戦がいない上空から魚雷装備に換装中だった日本空母部隊へ群がる。次々に正規空母が被弾するなか、多少北方に位置していた空母「飛龍」が比較的無傷なことから独断専行で爆弾装備のまま攻撃隊が出撃。第一波、第二波と発艦する。飛立った攻撃隊が攻撃を終え、帰還途中の米攻撃隊を発見する。そのまま追尾して米艦隊を発見。第一波が一気に空母「ヨークタウン」に攻撃を加えた。日本の攻撃隊第一波が止み、しばらくして続く第二波も消火作業が済んだ「ヨークタウン」に攻撃を仕掛けていく。
結果、この海戦で日本軍は虎の子の正規空母4隻を全て失い、米軍は修復した「ヨークタウン」が沈没したに留まった。この海戦により以後日本は「空母」部隊による大規模な作戦が取れなくなったのである。
※「珊瑚海海戦」は史上初の空母対決となった海戦である。参加兵力は日本側が空母「瑞鶴」「翔鶴」「祥鳳」と艦艇数隻、米軍側は空母「ヨークタウン」「レキシントン」と艦艇数隻であった。結果、米軍は「レキシントン」が沈没、「ヨークタウン」も中破した。対して日本も空母「祥鳳」を失い、「翔鶴」が中破する結果となった。米軍は空母「ヨークタウン」を真珠湾へ運び急ピッチで復旧作業に入る。日本も「翔鶴」を呉へ運んだが、米軍が修復中の「ヨークタウン」に空母「サラトガ」の搭乗員を充てられたのに対し、日本は搭乗員の補充が容易ではなかったので、直ぐには作戦に参加出来なかった。この後のミッドウェー海戦では、珊瑚海海戦での指揮面と搭乗員の補充面で困難さを経験した教訓は活かされず、またしても敗北するのであった。
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