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レ イ:「海ですか?」 | ||
レイは眉をひそめてそう言った。 | ||
話は少しさかのぼる。真珠湾への奇襲を成功させたレイとナナはその足で司令室を訪れていた。 | ||
司令官はレイの報告を聞き、『それはよかった』と大きく安堵していた。 | ||
司令官:「今回の件は、私のせいで辛い訓練を強いてしまった。申し訳ない」 | ||
そして司令官は、深々とレイとナナに頭を下げた。 | ||
レ イ:「いえ、いい経験がつめてよかったと思っています」 | ||
ナ ナ:「ボクもボクも。訓練のおかげで戦闘スキルがアップしました。感謝してまーす」 | ||
司令官:「そう言ってもらえて、助かるよ」 | ||
司令官は再び安堵のため息を漏らすのだった。 | ||
司令官:「お詫びと言ってはなんだが、二人を海水浴に招待しようと思っている」 | ||
そして今に至る。 | ||
司令官:「うむ。真珠湾からずっと休みなしで働いてきただろう? そのご褒美だ。しばらく鋭気を養ってくれ」 | ||
レ イ:「はぁ……」 | ||
ナ ナ:「海水浴は嬉しいけど、ボクたちそれ用の装備を持ってないよ」 | ||
司令官:「それについては問題ない」 | ||
司令官はとたんに、偉そうにふんぞり返った。 | ||
司令官:「ここに、君たちの水着が入っている。これで存分に泳いできたまえ」 | ||
司令官は机に包みを出した。 | ||
レ イ:「しかし、私たちだけ休暇を取るのは気が引けます」 | ||
司令官:「休息は命令だよ、レイくん。トラック諸島で休むように」 | ||
命令とあっては仕方がない。レイは諦めたように嘆息した。 | ||
レ イ:「わかりました、司令官殿。トラック諸島での休暇にいってまいります」 | ||
ナ ナ:「わーい、休暇だ休暇だ。ありがとうございます、司令官殿」 | ||
レイとナナが立ち去った後だった。司令官は厳かにあかぎの名を呼んだ。 | ||
司令官:「あかぎくん」 | ||
あかぎ:「わかっておりますわ、司令官」 | ||
あかぎは何度も何度も頷いて、両手を差し出す。その手に、一台のカメラが乗せられた。 | ||
司令官:「水着姿のレイくんとナナくんをしっかり収めてきてもらいたい」 | ||
あかぎ:「わかっていますとも。そのかわり、独り占めはいけませんわよ、司令官殿。私にも楽しむ権利を下さい」 | ||
司令官:「焼き増ししても構わない」 | ||
あかぎ:「そうこなければ。俄然やる気がでましたわ」 | ||
あかぎ、少し鼻息が荒い。いや、司令官もかなり荒いのだが。 | ||
あかぎ:「ところでわたしの写真はよろしいんですか? 司令官」 | ||
司令官は露骨に顔をしかめた。 | ||
司令官:「ばーさんの水着姿を眺めてもなぁ……」 | ||
あかぎはにこやかに笑って、銃口を司令官に向けた。 | ||
あかぎ:「今、なんとおっしゃいました?」 | ||
司令官:「いや、なんでもないっ!! 是非是非あかぎくんの写真も撮ってきてくれ」 | ||
慌てて訂正し、司令官は深々と頭を下げて見せたのだった。あかぎがわざとらしくため息をつく。 | ||
あかぎ:「仕方ありませんわねぇ。はぁ……」 | ||
そしてそのため息をスイッチのようにして、あかぎは雰囲気をがらりと変えた。 | ||
あかぎ:「ですが、本当にトラック諸島でいいんですか?」 | ||
司令官:「いいぞ。いい所じゃないか、トラック諸島」 | ||
あかぎは額を押さえてかぶりを振った。 | ||
あかぎ:「現在、トラック諸島を拠点にウェーク島をうちが攻略中ですよ?」 | ||
司令官:「何? 初耳だぞ、それは」 | ||
あかぎ:「なんで副官の私が知っていて、司令官が知らないんですか……」 | ||
司令官:「どうしよう、どうしよう、どうしよう……」 | ||
ただひたすらおろおろするばかりの司令官。 | ||
あかぎ:「……はぁ」 | ||
司令官:「ま、まだ何かあるのかね?」 | ||
あかぎは何度目かの深い深いため息をついた。 | ||
あかぎ:「いえ――はぁ……わかりました。そちらは現地で私が何とかいたします」 | ||
司令官:「そ、そうか頼んだぞ、あかぎくん」 | ||
ナ ナ:「うわー、すごーい。綺麗な海ーっ!」 | ||
レ イ:「基地の海とは全然違うな」 | ||
ナナの言葉を受けて、レイが微笑む。ナナは両の拳を握り締めた。 | ||
ナ ナ:「よしっ。海を満喫するぞーっ!!」 | ||
あかぎ:「あそぶなら水着に着替えないと、パーツが錆びちゃうからダメよ~」 | ||
後ろからあかぎの声が聞こえた。 | ||
その声にレイとナナとを後ろを振り向くと――― | ||
そこには大きな胸を惜しげもなく強調した水着で立つあかぎがいた。 | ||
あかぎ:「どう? 似合うー?」 | ||
身をくねらせながら尋ねてくる、あかぎ。レイとナナはそのプロポーションに言葉を失った。ナイスバデーとはこのことをいうのだろう。胸はこれでもかというほどに張り詰めて丸く、腰はきゅっと絞られて、お尻も位置が高く、小さくきれいな円を描いている。二人ともそう思った。 | ||
ナ ナ:「すごく似合ってるよ、あかぎ。ぼいんぼいんだ。いいなぁ」 | ||
あかぎ:「うふふっ。ありがと」 | ||
うらやましそうなナナに対し、レイは顔を真っ赤にして目をそむけている。 | ||
レ イ:「そんなけしからん格好で海に入るのか!?」 | ||
あかぎ:「そうよ~」 | ||
レ イ:「破廉恥だっ!!」 | ||
あかぎ:「私は自分の体に自信があるから、全裸になっても構わないくらいよ?」 | ||
レ イ:「ぜん……っ!!」 | ||
あかぎ:「まあ、実際問題、そこまでしたら色々と面倒だからしないけれどね」 | ||
ぺろりと舌を出してみせるあかぎ。そしていつまでも装甲を実につけているレイとナナを更衣室へと促した。 | ||
あかぎ:「二人とも、早く着替えていらっしゃい。そうじゃないと海で遊べないわよ?」 | ||
ナ ナ:「はーい。いこ、レイ」 | ||
レ イ:「あ、ああ」 | ||
レイはナナに引きずられるようにして、更衣室へと向かった。 | ||
インド洋へと向かう船上のレイとナナとあかぎ。レイはイギリス軍との戦いに供えて甲板で剣を振っている。 | ||
その横ではあかぎが入念にイギリス軍の情報に目を通している。 | ||
レ イ:「ふぅ。少し休憩するとするか」 | ||
あかぎはまだ真剣にイギリス軍の情報に目を通している。今回の作戦はそんなに大変なのかと、レイは後ろからあかぎの持つ資料に目を走らせた。 | ||
しかしその資料には、女の子のことしかかかれておらず、レイは途端にやる気をなくした。 | ||
レ イ:「おい、あかぎ。その資料は一体なんなんだ?」 | ||
あかぎ:「ドイツ軍のルーデルのルーちゃんから送られてきたものよ。イギリス軍の可愛い女の子のリストなの」 | ||
レ イ:「……それを見て、どうすると?」 | ||
あかぎ:「目の保養になるじゃない」 | ||
レ イ:「変態め」 | ||
あかぎ:「失礼ねぇ。可愛い女の子が好きなだけよ。ルーちゃんと共通の趣味よ」 | ||
レ イ:「だいたい、そのルーデルちゃんというのは誰なんだ?」 | ||
あかぎ:「ドイツ軍の兵士で、悪魔のサイレン、なんて怖ーい二つ名を持つ女の子よ。でもとっても可愛いし、趣味があうの。女の子好きっていう趣味がね」 | ||
あかぎ:「それで、ルーちゃんとはペンフレンドなんだけど、今度イギリス軍と戦うって言ったら、このリストを送ってくれたの。どの子も可愛いと思わない?」 | ||
レ イ:「知らん」 | ||
レイは吐き捨てるように言った。 | ||
あかぎ:「まあまあそう言わずに。見てみなさいな」 | ||
レイはヒジョーに嫌そうな顔をしながら、イギリスの鋼の乙女の写真を見る。ふと一枚の写真が目に入り、それをまじまじと見てしまう。 | ||
レ イ:「…………」 | ||
あかぎ:「あら、なにか気になる子でもいるの?」 | ||
あかぎが訊くと、レイはぶんぶんとかぶりを振った。 | ||
レ イ:「なんでもない!! この情報は私には無用のものだ!!」 | ||
レイが乱暴に写真をあかぎにつき返す。 | ||
レ イ:「私は鍛錬に戻る!!」 | ||
レイの顔は少し赤く、動悸も少し早かった。そこへナナが釣りざおを持って訪れる。 | ||
あかぎ:「あら、釣りでもするの、ナナちゃん?」 | ||
ナ ナ:「うん。食料が微妙に足りないから、魚を釣ってきて欲しいって頼まれたんだ」 | ||
レ イ:「ほう、釣りか。釣りというのは精神統一にはもってこいと聞いたことがあるんだが……」 | ||
ナ ナ:「レイも一緒にやる?」 | ||
レ イ:「ああ、やろう」 | ||
あかぎ:「じゃ、私はおやつの準備でもしてくるわ~」 | ||
あかぎの姿が見えなくなると、海に向かって竿を振りながら、二人は見詰め合って首をかしげる。 | ||
ナ ナ:「ところでさぁインドって、どんなところ?」 | ||
レ イ:「さあ……行ったことがないからな」 | ||
ナ ナ:「カリーがおいしいってことぐらいしか、知らないねぇ」 | ||
レ イ:「ではイギリスといえばなんだ?」 | ||
ナ ナ:「敵国」 | ||
レ イ:「それはわかってる」 | ||
ナ ナ:「紅茶の国、かなぁ……?」 | ||
なかなかどうして、物知らずな二人であった。レイとナナが二人並んで船べりに座り、釣竿を垂らしている。レイはただ目を閉じてじっとしている。 | ||
ナ ナ:「レイ、レイ!! 今、めちゃめちゃ魚が食らいついてるよ!!」 | ||
レ イ:「うん、そのようだな」 | ||
ナ ナ:「そのようだな、じゃないよっ!! 釣竿引いて引いて!!」 | ||
レ イ:「それがな、ナナ」 | ||
困り果てた柴犬のような顔でレイ。 | ||
レ イ:「いつ、どう引けばいいのか、わからん」 | ||
ナ ナ:「レイって、戦闘以外じゃ役立たずかも」 | ||
レ イ:「返す言葉もない」 | ||
ナ ナ:「とにかく、こうやって釣竿に引っかかりを感じたら、すぐに引くの。こう!」 | ||
ナナはレイの後ろから釣竿を引く。が。釣竿には何も引っかかってなかった。 | ||
ナ ナ:「あーあ、餌だけ思う存分持ってかれちゃったね」 | ||
残念そうにいうナナに対して、レイはうむむとうなった。 | ||
レ イ:「釣りというのは、奥が深い」 | ||
ナ ナ:「いや、奥っていうか、君の場合は手前にすら来てないと思うよ」 | ||
ナナの呆れたような口調にレイは『そうか?』と首をかしげた。 | ||
ナ ナ:「レイ、戦闘の時は凛々しくてかっこいいのにねぇ」 | ||
レ イ:「面目ない」 | ||
ナ ナ:「ま、次に期待だね。ほら、ここに餌を引っ掛けて、海にほいっと」 | ||
レイの釣竿に餌を引っ掛けて海に釣竿を放るナナ。 | ||
ナ ナ:「釣竿にひっかかりを感じたら、すぐに引き上げるんだよ」 | ||
レ イ:「わかった」 | ||
ナナの注意にレイは神妙に頷いた。ナナのバケツには魚が何匹かあるが、レイは見事にぼうずだった。 | ||
レ イ:「お、引っ掛かりがあったぞ」 | ||
ナ ナ:「じゃあ、釣竿を引き上げて」 | ||
レ イ:「よし」 | ||
ぐいっ、と乱暴に釣竿をつり上げるレイ。ナナは慌てて声をかけた。 | ||
ナ ナ:「ちょっとちょっと! いきなり乱暴につり上げちゃ駄目だよ! 逃げられちゃうじゃないか!!」 | ||
レ イ:「大丈夫だ。根性で何とかなる」 | ||
ナ ナ:「絶対ならないよ~」 | ||
あかぎ:「レイちゃん、ナナちゃん、おやつの時間よ。二人の大好きな、ラムネと抹茶~」 | ||
レ イ:「ほら、つれたぞっ!!」 | ||
あかぎ:「きゃぁんっ!!」 | ||
レイの得意げな声と、あかぎの悲鳴が、同時に聞こえた。 | ||
何かと思ってナナが二人をみやると、なんとレイがつり上げたイカがあかぎにからみついている。 | ||
あかぎ:「いやぁん、にゅろにゅろするわぁ~」 | ||
あかぎの上半身が海水に濡れ、胸の形が強調されるようになっている。 | ||
その際、持っていたイギリス軍の可愛い女の子リストが甲板に散らかった。 | ||
レイはそれに一瞬だけ目を奪われていたが、誰もそれを気付くことはなく、注目はあかぎへと集まっていた。 | ||
あかぎには、イカがこれでもかというほど、いろんな角度から絡み付いていた。 | ||
そしてイカのぬめりによって、あかぎの服はぴったりとその豊満な体にフィットする。 | ||
あかぎ:「いやぁん……そこはダメ。触らないで、あぁんっ……いやだっ、でばぁ……んんんっ」 | ||
無駄にエロい声をだすあかぎ。なんとなく、レイとナナの頬が上気する。 | ||
ナ ナ:「大丈夫、あかぎっ!?」 | ||
ナナはぶんぶんとかぶりをふった後、急いでイカをあかぎから引き離す。 | ||
あかぎ:「あー、びっくりしたわ、もう~」 | ||
レ イ:「すまない、あかぎ」 | ||
レイも紅潮した頬のまま、頭を下げる。あかぎはひらひらと手を振った。 | ||
あかぎ:「いいのよぅ。それより、ラムネと抹茶がこぼれちゃったわね。新しいの持ってくるわ」 | ||
ナ ナ:「わーい、ありがとう。あかぎ」 | ||
レ イ:「ついでに着替えて来い。ここには男の目もあるんだから」 | ||
あかぎ:「わかってるわよぅ―――ちなみに、それを飲んだら休息は終了ね。そろそろ作戦海域に到着するから」 | ||
ナ ナ:「97戦艦攻、はりきって働いてきまーすっ」 | ||
レ イ:「皇国のため、敵機を一機でも多く撃ち落としてくる」 | ||
あかぎ:「たのもしいわぁ、二人とも。その意気で頑張ってねぇん」 | ||
あかぎが着替えと、新しいおやつを取りに行くため、甲板からいなくなる。 | ||
ナナはわくわくした目でレイを見つめた。 | ||
ナ ナ:「今度の作戦も、頑張ろうねレイ!!」 | ||
レ イ:「もちろんだ。皇国のため、何が何でも勝利をもぎ取ってやる」 | ||
ナ ナ:「ところでレイ、釣ったイカはどうする? 刺身にする? それとも調理してもらう?」 | ||
レ イ:「せっかく取れたてなんだ、刺身にしてもらって食べよう」 | ||
ナナはイカを手に立ち上がり、調理室へと向かっていく。 | ||
ナ ナ:「イーカー、イーカー、イカ刺しイカ刺し楽しみだなっ♪」 | ||
ナナは体を揺らして、鼻歌を歌いながら目を輝かせている。それは戦闘に対する興奮ではなく、明らかにイカ刺しにとらわれていた。 |
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