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レ イ:「あかぎ、今戻った」 | ||
あかぎ:「無事に戻ってきてくれてよかったわ~」 | ||
???:「君が、レイ?」 | ||
そこへ見たことのない少女がレイに駆け寄ってきて、レイの中国での活躍に目を輝かせていた。 | ||
あかぎ:「電文で書いた、ナナちゃんよ」 | ||
レ イ:「レイだ、よろしく」 | ||
ナ ナ:「よろしく~」 | ||
司令官:「レイくん、よくやってくれたな」 | ||
そこへ司令官が現れ、初めての時と同じように握手なんだかセクハラなんだかよくわからない行動に出ようとすると、レイは慌てて手を引っこ抜いた。 | ||
『ちっ』と、舌打ちする司令官が見えた。 | ||
司令官:「これからはナナくんと二人で力を合わせるように」 | ||
そして懲りずに、レイとナナの手に触れようとした瞬間ナナは司令官を突き飛ばす。 | ||
あかぎ:「だから言ったじゃないですか、司令官。ナナちゃんは男性が苦手だって」 | ||
と困った子供を見るような眼で司令官を見るあかぎ。なんとなくナナの性格を掴めたレイはナナに共に戦う仲間として手を差し出した。 | ||
レ イ:「これから、よろしく」 | ||
ナ ナ:「一緒にがんばろうね」 | ||
手を握ってぶんぶんと痛いぐらいに手を振る。 | ||
それを、うらやましそうに司令官が見つめていた。 | ||
レ イ:「お前は本当に元気がいいな。あかぎの言っていた通りだ」 | ||
ナ ナ:「あはは。ただうるさいだけだよ。それより君すごいね~。中国の機体をぎたぎたにしてきたんだろう? すごいよ、さすがだね」 | ||
レ イ:「すごいといわれると嬉しいが、『さすが』といわれる意味がわからない」 | ||
するとナナは素っ頓狂な顔をした。 | ||
ナ ナ:「知らないの? 君、この基地では有名人なんだよ?」 | ||
レ イ:「有名人? 私が? なぜ?」 | ||
ナ ナ:「誰よりも早く訓練をして、誰よりも遅く訓練を終える。その間無駄話は一切しないで、ひたすら一生懸命。しかも飛び切り可愛い女の子!」 | ||
ナ ナ:「ボクも上官たちに言われてるんだよ、少しは見習えってね」 | ||
レ イ:「そうだったのか……」 | ||
自分がそんなに有名人だとは知らなかった。あらためて聞かされると少しくすぐったい。当たり前のことを当たり前にこなしているつもりだったのに。評価してくれる人がいる。ありがたいことだった。 | ||
だが―― | ||
レ イ:「別に私は可愛くはないと思うぞ」 | ||
ナ ナ:「何言ってんの。鏡みなよ鏡」 | ||
ナナがすっと、鏡を差し出す。そこには、無表情なレイが映っていた。レイはやや呆れ気味にナナを見た。 | ||
レ イ:「鏡なんて、いつも持ち歩いているのか?」 | ||
ナ ナ:「女の子のたしなみだよ? レイも持ち歩くといいよ」 | ||
女の子のたしなみ。そう言われてしまえば、素直にレイも納得するしかない。 | ||
しかし、鏡に映っている自分は、やはりいつもの自分で、可愛いとは思えなかった。 | ||
それなら、ナナのほうがよほど可愛いと思う。そのナナはというと、興奮気味にこちらに詰め寄ってきていた。その勢いに、二、三歩後退する。 | ||
そして後退したぶんだけ、ナナがきらきらと輝かしい瞳でこちらを見ながら近づいてくる。 | ||
ナ ナ:「中国で見事勝利を収めたのは、その訓練の成果かな。本当にすごいよね。初出撃は死ぬ人のほうが圧倒的に多いっていうのに」 | ||
レ イ:「そうだな……たぶん、たまたま運がよかっただけだろう」 | ||
ナ ナ:「またまた、謙遜しちゃって。でも本当にすごいよ。君が勝利したのを知ったここの基地の人たち、皆で快哉(かいさい)をあげたんだもの」 | ||
レ イ:「そ、そうか……それは、ありがたいというかなんというか……」 | ||
ぽりぽりと頬をかくレイに、ナナは目をかまぼこにして、にや~っと笑った。 | ||
ナ ナ:「もしかして、君照れてる?」 | ||
レ イ:「て、照れてなぞいない!!」 | ||
ナ ナ:「嘘付け~。顔が真っ赤だよ~。可愛いなぁ、もう」 | ||
先ほどの『可愛い』とは違い、ナニか含みのある言い方だった。 | ||
レ イ:「か、可愛い!? 馬鹿ににしてるのか!?」 | ||
ナ ナ:「本心を言ってるだけだよ。照れてるレイは可愛い」 | ||
大きく頷くナナ。レイは顔どころか首まで真っ赤にした。 | ||
ナ ナ:「あはははは。頭の上からしゅ~って蒸気が出てるみたい。面白いなぁ、君」 | ||
レ イ:「う、うるさいっ!!」 | ||
レイは体の内側のむずがゆさと、体中の熱さを振り払うため、刀を取り出した。 | ||
ナ ナ:「照れ隠しに怒ってる~!! 怖い怖いっ♪」 | ||
レ イ:「うるさいっ!! そこになおれっ!!」 | ||
ナ ナ:「やーだよー」 | ||
刀を振り回してナナを追うレイ。けらけらと笑って逃げるナナ。二人の追いかけっこはしばらく続いた。 | ||
あかぎに呼ばれレイとナナが司令室へ向かう。 | ||
そこには怒っているあかぎと申し訳なさそうな司令官が待っていた。 | ||
レ イ:「それで、何の御用でしょうか?」 | ||
あかぎ:「はぁ~」 | ||
司令官:「そんな目で見ないでくれたまえ、あかぎくん」 | ||
あかぎ:「見させているのは誰ですか、司令官」 | ||
ナ ナ:「? 話が見えないんですけど……」 | ||
司令官:「いや、実はだね、知り合いのドイツの司令官が欧州での華々しい活躍を自慢してきたので、ちょっとムカッときててしまってね」 | ||
司令官:「日本軍は何をやってるんだとか言われたら怒るだろう? 普通。それでだね、つい米軍をギッタギタにしてやると言ってしまったんだ」 | ||
あかぎ:「言ってしまったんだ、じゃありませんっ!! 見栄やプライドの空砲じゃ敵は撃てないと何度言わせれば気が済むんですか!!」 | ||
司令官:「いや、面目ない」 | ||
レ イ:「…………」 | ||
レイは呆れ返って言葉も出なかった。いや、ムカッとくるのはわかる。人間だから、イライラもするだろう。しかし、そこで理性をぶち切って見栄を張るというのはいかがなものか。 | ||
ナ ナ:「撤回は出来ないんですかー?」 | ||
司令官:「それが、出来ないんだよ。トントン拍子に話が進んでしまって、もう引き返せそうにないんだ」 | ||
あかぎ:「そういうわけだから、申し訳ないんだけれどそのための訓練を鹿児島で受けてきてもらえないかしら?」 | ||
ナ ナ:「まあ、先日真珠湾攻撃が決まったからレイと一緒に訓練をやってたわけですけど……」 | ||
あかぎ:「というか、真珠湾攻撃の理由が、それなのよ」 | ||
レ イ:「…………」 | ||
ナ ナ:「…………」 | ||
司令官:「そんな目で見ないでくれよう。悪かったよう」 | ||
あかぎ:「はぁ……」 | ||
深いため息をつくあかぎ。 | ||
レ イ:「でも、まぁ、中国で戦ったP-40を思い出すな。上手くいけば、またそいつと戦えるわけか」 | ||
レイは中国で苦戦した米軍機の存在を思い出す。 | ||
その間にナナも考えをめぐらせて素直に頷いた。 | ||
ナ ナ:「今までの訓練じゃボクは足手まといになりそうだし、うん、いいよ。鹿児島まで行って来る」 | ||
そしてレイもナナに追従するような形で頷く。 | ||
レ イ:「私も行こう。楽しみだ」 | ||
あかぎ:「ごめんなさいねぇ。ほんと、見栄っ張りな司令官で」 | ||
司令官:「そう言わないでくれ、反省してるんだから。そういうわけだから、レイくん、ナナくん、頑張ってきてくれ」 | ||
司令官が懲りずにセクハラもどきの握手をする。そしてナナに張り倒されていた。レイは懲りない人だと呆れていた。 | ||
司令官:「……握手ぐらい、いいじゃないか……」 | ||
あかぎ:「少しは懲りる、と言う言葉を覚えたほうがいいですね、司令官。誰のせいで二人が鹿児島まで行く羽目になったと思っているんですか」 | ||
司令官:「いや、面目ない」 | ||
あかぎ:「それは何度も聞きました!」 | ||
こうして、レイとナナは鹿児島へ向かうこととなったのだった。 | ||
一路鹿児島を目指す、レイ、ナナ、あかぎの三人。 | ||
ナ ナ:「ねぇ、あかぎ。訓練って、具体的にはどんな感じなの?」 | ||
あかぎ:「鹿児島湾で浮かんでいる商船を敵に見立てて攻撃するのよ」 | ||
ナ ナ:「商戦なら簡単簡単」 | ||
あかぎ:「あら、舐めてかかっちゃダメよ~。向こうからの攻撃もあるからね~」 | ||
あかぎ:「余裕なんて思ってたら撃墜もありえるわよ」 | ||
そう笑いながら語るあかぎだったが、その目は笑ってはいなかった。 | ||
ナ ナ:「あはは……が、がんばるよ!!」 | ||
鹿児島へ到着した一行は、再度あかぎより訓練の内容を説明される。 | ||
あかぎ:「ここでナナちゃんに課題ね」 | ||
ナ ナ:「えー、ボクだけー? レイは?」 | ||
不満げな声を出すナナ。あかぎは自信満々に言った。 | ||
あかぎ:「レイちゃんには課題なんか必要ないわよ」 | ||
レ イ:「戦闘に勝つためだ、頑張れ」 | ||
ナ ナ:「はーい。で、その課題の内容は?」 | ||
あかぎ:「で、その課題なんだけど。作戦を行う上で重要な、水平雷撃を行ってちょうだいね」 | ||
ナ ナ:「うわー、なんか難しそう……」 | ||
レ イ:「勝ち残るための試練だ。頑張って乗り切れ」 | ||
ナ ナ:「はぁい」 | ||
あかぎ:「あんまり緊張しすぎてもダメよ。緊張のしすぎは、成功するものも失敗に導くから、落ち着いて、ね?」 | ||
ナ ナ:「うんっ。ボク、頑張るっ」 | ||
ナナは少しリラックスした感じで言った。あかぎがそれを見て、満足げに笑う。 | ||
あかぎ:「それじゃ、各自持ち場についてちょうだい」 | ||
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