近年、経済的発展が目覚ましい中国は、拡大する一方の資源需要を賄うために、アフリカ諸国を中心に世界中で資源開発への投資を続けている。
とりわけ希少金属・石油資源採掘への投資は著しいが、その一方で、開発を巡るトラブルも多発していた。
たとえば、利権を得たい中国政府に対して、資源国の役人や政権中枢が、賄賂や軍事援助を要求したり、一方でその恩恵にあずかれず、採掘のために住み慣れた土地を住民が追い出されたり、利益の配分を巡って少数部族がないがしろにされることなども起きていた。
特にアフリカ東部・スーダンでの石油利権に絡む問題は深刻だった。
バシル政権下のスーダンでは、イスラム教アラブ系住民が、南部・西部のキリスト教黒人系の住民を迫害する事件がたびたび起きていた。これは国際的な非難の的だったが、2003年2月、西部のダルフール地方で、ついに民衆が蜂起する。
ところが、政府に後押しされたアラブ系民兵組織ジャンジャウィードなどが、逆に、キリスト教系住民に対して、非人道的な民族浄化運動を実施。数十万人もが犠牲となったのである。
このとき、スーダンでの石油利権を握っていた中国は、利権と引き換えに多大な援助をしていたことからスーダン政府に強い影響力を持っていた。にもかかわらず、この虐殺行為を止めさせるどころか、「内政不干渉」を理由に事態を放置したのである。
それは、石油利権のためなら、人命などいとわないと言っているのに等しかった。
その後、中国政府のこの対応は、人権問題としても国連で大きく取り上げられ、結果として、中国政府はスーダン政府に圧力をかけるよう国際社会からも求められる。
そして、このような経緯を経て、国連とアフリカ連合(AU)が合同で平和維持部隊を送り込むことにはなったのだが、事態は順調には推移しなかった。
反政府組織が分裂して、平和維持部隊の受け入れが必ずしも弾圧された民衆の総意ではなくなり、さらに、ジャンジャウィードが再び民族浄化運動の虐殺を始めたからである。
これを看過できない米国は、国連・アフリカ連合を出し抜く形で、スーダンへの武力介入を決定した。だが、その裏では、スーダンに眠る膨大な石油資源の利権を手に入れたいとの米政府の思惑が見え隠れする。