主な登場人物

ひあがり():
 開幕試合で筑前アルファが勝利したことに嫉妬心を隠さない狭量な人間。これでミキサーズが開幕戦に敗れたりすれば、「この企画を打ち切る!」などと言い出しかねない。

シロウト():
 見事開幕勝利を飾った勢いから、「優勝だ! 優勝するんだ!」が口癖になった妄想型人間。ペナント結果を一刻も早く知りたくて、ひあがりに無断で全試合スキップモード進行させようと企んでいる。

第7回「男らしく正々堂々と勝負!・・・しません 開幕戦 オクラホマ・ミキサーズ編」

「大体、なんだ! あの筑前アルファの勝ち方は! 勝てば良いと言うものではないのだ! ハラハラドキドキ感に欠けておるのだよ。
  ピンチを迎えて胃が痛くなったり、サヨナラ負けしそうになって、心臓がバクバク言ったりするなかで掴む勝利だからこそ、その味も格別なのでR!」

「いよいよ、我がミキサーズもオープニングゲームを戦う訳だが、両チームのスターングメンバーはこうなっておる」



  ライオンズの四番は、パ・リーグ最高の長距離砲カブレラ! そして先発は予想に違わず松坂!
  対する我がチーム先発は、エース山便。『ヤマベン』じゃないよ! 『ヤマダヨリ』だよ、『ヤマダヨリ』!
  十人並みの速球と、何気ないカーブ、そして球威の無さが潔い、“ミスターノックアウト”の名を欲しいままにしているナイスガイだ。
  よって対ライオンズ戦略ははっきりしておる。兎に角、ピンチになったらカブレラとは勝負を避ける!」
「打たれてこそ華じゃなかったのかよ!」)

「どこかで、変な声が聞こえた様な気もするが、まあ構わん。
  さて、試合開始に先立って、ミキサーズのユニフォームを紹介しておこうか」



「ミキサーズのチームカラーは、“ショッキングピンク&パステルブルー”でキメキメ(死語)なのだ。
  左から順に、ホーム用、ビジター用、そしてサンデーホームユニフォームとなっておる。
  ホーム用ユニフォームの基本色に赤を使って、野球協約違反しているどこぞやのチームとは大違いでR!」
「能書きは良いから、早く始めてください」)

「ウム。またもや怪しげな電波が届いた様だが、言われる急かされるまでも無くプレイボールだ!

  ・・・ライオンズに負けるが怖くて、先に進めなかったんじゃないよ! ホント、ホントだよ!」


「そうこう言ってビビッている間に、1回の表、ミキサーズの攻撃開始!
  ・・・って、“一番右翼”の神宮寺が、松坂のスライダーを軽く空振りしてまず1アウト。
  あの~、どのボールにも一球もかすっていないんですけど。
  それに松坂は、なんか好調な感じ? みたいな? 一体全体どーなってますか?」

「そうか、わかった! このゴチャゴチャした画面の情報がイカンのだ!
  今すぐ右クリックし“情報ウィンドウ”機能を使って、ウィンドウを整理すれば、すべての問題が解決するに相違なかろう。
  と、基本情報以外のウィンドウは閉じてみました」

「やれやれ、画面も見やすくなったし、これでヒト安心だ。
  ところが、どう言う風の吹き回しか、ミキサーズ、1回の表は三者凡退でやがんの。ブ~~ッ!
  さてその裏、“ミスターノックアウト”山便が颯爽とマウンドに向かう!
  ところが何の因果か、1番柴田には一球もストライクが入らず、ストレートのフォアボール。

開幕投手の大役にチビッてるのかよ! でなきゃ緊張でもしてやがるのかよ!
  続く2番中島はセンターフライ。そうだよ、碑山のところに打たせておけば安心なんだよな。
  3番フェルナンデスは、山便の何気ないカーブにタイミングが合わずに三振。
  迎えるバッターはカブレラ!
  山便、初回からいきなりのピンチ!
  カブレラと勝負してはイカン! 200%確実かつ絶対に打たれるから
  と、まるで願いが通じたかの様に、山便はカブレラを歩かせたりして、オイ! 実に良く出来てるな!」

「そして、続く和田をまたまた何気ないカーブで三振に切ってとっちゃったりして、上出来だよ、ヒデキカンゲキだよ。」

「2回の表、ミキサーズの攻撃は、このチームで唯一頼りになる男、“爆弾イカ野郎!”碑山のバッターボックスからだ!
  その碑山、1ボールから2球目のストレートに対して素直にバットが反応した!」

「右中間に125メートル弾が炸裂! ミキサーズが先取点だ!
  さすが7千万円プレイヤー、オマエがミスターミキサーズだ! 
  しかし後続を断たれたミキサーズ、さらに3回の裏、山便はあっさりと2アウトを取ったのだが、3番フェルナンデスをヒットで出塁させやがりました。
  せっかく1点リードしてるのに、ランナー出してカブレラに回しちゃ駄目だろ!
  断じて勝負してはイカン!」

「私が発した毒電波がまたも届いたか、カブレラを歩かせたりして、5番和田をまたも打ち取ったり。
  オイ! 本当に良くできてるな、コレ!」

「そしてピンチの後にチャンスあり! 4回の表、1アウトランナー無しから、ビリビリが見事センター前ヒットで出塁。
  さすが現役メジャーリーガーで5億円プレイヤー!
  だが“イカ野郎”碑山はセカンドゴロに倒れ、“ミスター3ラン”哀川もあえなくセンターフライ。
  ・・って、オイ! 小関が落球だよ! マジかよ!」

「こうなれば(どうなればだ?)、もうこっちのもの。
  6番、『単打を打たせたら史上最高の打者』」渋井が渋くしぶとくライト前に運んで、ミキサーズ、好調の松坂から追加点をあげやがった。
  これでスコアは2-0だ。渋井! 良くやった、キサマがミスターミキサーズだ!
  しかし、これ本当にゲームですか? ホントに良く出来てますね」

「さらに4回の裏、奇跡が続く。
  “ミスターフリーパス”こと、キャッチャーの森が、細川の盗塁を刺しちゃいました。
  10年に1度のスーパープレーが、開幕戦で観られるなんて、なんとも果報者だよ私は!」

「試合はそのまま、やや膠着して迎えたライオンズのラッキーセブン!
  無数のジェット風船が西武ドームに舞い上がり、試合の流れもライオンズに傾いたのか、ライトスタンドでメガホンが打ち鳴らされてます。
  ヤバイムードやがな」

「てか、ミキサーズのニ遊間は肩が弱く、度々の併殺機会を台無しにしてますから、ここまで無失点なのが不思議だった訳です。
  悪い予感は的中し、先頭打者細川を四球で出塁させると、1アウト後、柴田にも四球、そしてとうとう2番中島にレフト前タイムリーを浴びちゃいました。
  リードも風前の灯火、わずか1点差の2-1
  ここまで131球の熱投でマウンドを守って来たエース山便に、広岡監督が交代を告げます。
  代わったピッチャーは、異☆人セットアッパーの早田。頼みましたよ早田! 『ヘァ゛ッ!』てなところですか」

「しかしランナーはさらに進み、2アウト2、3塁で、バッターはカブレラ! 早田よ、勝負してはイカン!」

「嘘の様なほんとの話し、またまたまたカブレラを歩かせたりして。
  と言うよりも、1塁が空いてたので、敬遠気味のフォアボールだな、こりゃ。
  だが絶対絶命のピンチには変わりなし。ここは早田の特殊能力“アイアンハート”に賭けると肚を括る私。
  そしてそして、三度目のチャンスに燃える和田であったが、ここは早田のパームボール“ハヤタフラッシュ”を打ち損じてライトフライに終わったのでした。
  つーか、マジで心臓に悪い試合なんですけど」


「試合も終盤、8回の表もミキサーズは、ごくあっさりと三者凡退。
  その裏、早田は先頭打者をキッチリと抑えたところで、左バッターが続くライオンズ打線に対して、ミキサーズの誇る異☆人左サイドハンドの諸星がマウンドに向かう。
  頼むぜ諸星! 『チ゛ョワッ!』てなところですか」

「諸星には、特殊能力“左打者殺し”をつけてるので、多い日でも安心。
  の筈だったのだが、この諸星、高木、細川、小関と、三人ともツースリーのフルカウントからフォアボールで出塁させやがった! 死ね!
  と言うか、1点差しかねーんだよ! 1点差しか!」

「広岡監督は諸星を見限り、ピッチャーをニセ異☆人の進藤にスイッチ。
  なるほど、異☆人から、ギリギリ地球人へ交代させるとは、広岡監督も分かってらっしゃいます。
  しかし、大ピンチはまだまだ続くよどこまでも~」

「1番柴田にもフルカウント。とほほ、押し出しかよ! と思っていたら、柴田は高々とライトにフライを打ち上げやがりました。
  飛距離も充分。もう駄目だ! 同点だ、次は逆転されるに違いない! どー責任取っててくれやがりますか? モロボシ・ダンジロー君! 上司を呼びつけて叱責するぞ、この野郎!
  と口汚く罵った直後!」



「“一番右翼”の神宮寺が本塁目掛けて『レーザービーム!』奇跡の様に俊足高木浩を補殺してピンチを救ったのでした!
  凄いぜ、神宮寺! キミ以外にミスターミキサーズはいない!」

「1点差のまま最終回に突入となれば、我がチームの勝ちパターン。山川がマウンドに登る。
  そしてショートには、超メジャー級の守備を誇る(でも肩はE)川井が守備固めについた。これでミキサーズは安泰なのだ」



「その川井、スーパープレイで山川を盛り上げる盛り上げる! だが、真っ向勝負したカブレラにセンター前を浴びてしまった。
  一発出れば、逆転サヨナラ~~~ッ。
  そしてマウンドの山川は、『サヨナラホームランを打たれたら、右に出る者は神宮寺だけ』なホド、ポンポン放り込まれるピッチャーだったり。
  しかもここでバッターは、今日チャンスで三度凡退している和田! 
  条件はそろい過ぎました。カウント1-1から、運命の3球目!
  打球は快音を残してライトスタンドに一直線!
  駄目だこりゃ」

「だが! マタシテも奇跡は起こった! 
  “一番右翼”神宮寺が、右中間フェンスギリギリ手前で打球をキャ~~~ッチ!!」

「ご覧の様に、2-1でオクラホマ・ミキサーズの勝利でございます。
  勝利投手、山便、1勝。セーブ投手は山川、1セーブ。敗戦投手は松坂、1敗です。
  またのご来場を心よりお待ちしております。
  やったぜ! 強敵に競い勝ってミキサーズが初勝利だ!
  よくやった山便、早田、山川、碑山、渋井に神宮寺! 褒めてつかわす。
  あっと、それから諸星は切腹。
  どうですか、お客さん! これぞプロ野球、これぞドラマチックベースボール! 試合には感動が無くてはならんのだ。
  どうだね? シロウト君!」



「やれやれ、バカ長い解説がやっと終わった様ですね。
  これで、ひあがりさんも同じく1勝、残りの2試合はどうなりますやら」

「ウム。しかし、だ。開幕3連戦はさて置き」

「あれほど開幕、開幕と騒いでいたのに、もうさて置くんですか?
  さあ、さて置いて何です?」

「その次の3連戦は、ミキサーズとアルファの直接対決だったりするのだったりするのだな、これが」

「なんですって!? 聞いてないですよ。
  いきなり激突ですか? 雌雄を決するの? マジでそんな日程でしたっけ」

「ウム。ランダムシャッフルした結果、偶然かつ間違いなく、そうなっているのでR!
  では、次回、『実のところはどっちが強いの? 直接対決編』に続きますよ! ドキュンドキュン!」